こんにちは。れこぽんです🍋
今回、独特の映像美で知られる
『グランド・ブダペスト・ホテル 』をNetflixで鑑賞。
実際に観てみると、単なるコメディ映画とは違う印象を受けました。
ユーモラスでありながら、どこか奇妙で、
サスペンスのような緊張感も漂う不思議な作品。
この記事では
- 作品概要
- 感想
- 考察┃難しく感じる理由
大きく3つの視点から、この映画の魅力をまとめていきます。
作品概要
公開年 2014年
製作国 ドイツ・アメリカ合作
監督 ウェス・アンダーソン
受賞歴 第64回ベルリン国際映画審査員グランプリ
第87回アカデミー賞
ゴールデングローブ賞 等
あらすじ
※今作は伝聞を重ねるという特殊な構造ですが、
ここでは物語のメイン部分だけを紹介します。
物語の舞台は架空の国ズブロフカ共和国。
富裕層などが集まる名門ホテル「グランド・ブダペスト・ホテル」では
伝説的なコンシェルジュのグスタフがホテルを仕切っています。
彼の元で働き始めたロビーボーイ・ゼロは移民出身者。
ゼロはグスタフに気に入られ、
ホテルマンとしての仕事を学んでいきます。
ある日、グスタフの常連客の一人である
マダム・Dの訃報が新聞に載っていました。
グスタフはゼロを連れて彼女の城へ向かうのですが、
そこで遺産相続をめぐる騒動に巻き込まれてしまいます。
こうして二人は思いがけない事件の中で、
逃亡劇や冒険を繰り広げることになります。
ゼロはなぜ「グランド・ブダペスト・ホテル」を相続することになったのか。
その出来事が、シュールでユーモラスに語られていきます。
感想
ネタバレを含みます。
美しいシュールコメディ
今作は笑える映画というよりは
シュールさと独特な気品が強く残る映画でした。
例えばグスタフが、常連たちをもてなす場面。
瞬時に差し込まれるから映像から、
「グスタフが客人のお相手をする」の意味を察するのですが
それまでのホテルの上品な雰囲気とはあまりに対照的で少々戸惑いました😰
あまりに淡々とユーモア?が続くので、若干生々しいところも
美しいシュールコメディとして観れるところがとても良かったです。
映像がとにかくおしゃれ
なんといっても、みどころは映像の美しさ。
ピンク色をしたグランド・ブダペスト・ホテルの外観
赤のエレベーター内装とホテルマンたちの青の制服
どのシーンを切り取っても、絵になるような色彩が素晴らしいです。
特に、菓子職人のアガサが働く店・MENDL‘Sがとびきり可愛いです。
ゼロとアガサが箱いっぱいの車にダイブするシーンや
カラフルなシュークリームが重なったスイーツなど
現実離れした可愛さが惹きつけられます。
他にも、マダム・D城のクラシカルで荘厳な内装もうっとりしました。
とにかく、舞台美術 衣装、構図、レイアウトの全てから
こだわりある美しさを感じました。
テンポの良いサスペンス要素
今作の全くシリアスにはならないサスペンス要素も気に入りました。
唐突に現れる○首や切断された○など…。
観る人の度肝を抜くような映し方で、
ちょっとした緊迫感とスリリングが味わえます。
ほどよい間とテンポ感の緩急は絶妙で、
次の展開が気になる作り方が秀逸だなと思いました。
予備知識が必要?
ただ個人的に、一回の視聴では理解しきれない部分がありました。
例えば、
列車での軍の検問は、なぜゼロだけが目を付けられるのか?
ブダペストホテルは占領されたの?
なぜゼロは相続したのに買い戻す必要があった?などなど
作品はずっとコミカルな雰囲気だからこそ、
そこに潜んでいた暗さを認識するのに時間がかかりました。
沢山の受賞歴がある作品だけに、この映画が示すテーマは深いです。
世界史的な予備知識あったら、そこへもっと早く到達できたのかなと思います。
考察┃難しく感じる理由とは
①重層構造(入れ子構造)のストーリー
この映画の物語は
冒頭の本を読む女性
↓
老人の作家
↓
若い頃の作家
↓
老人のホテルオーナー(ゼロ)
↓
若き日のゼロ👈ここが物語のメイン
という形で、
伝聞を重ねて語られる構造になっています。
この入れ子構造によって、
物語は“さまざまな人の記憶”として感じられます。
しかし、その作り方が逆に
「今は誰の話?」「誰が主人公?」
と少し理解しづらく、難しさに繋がっているのかもしれません。
実際、私も一回では理解出来ず、
何回か巻き戻して確認しながら観ました。
どうやら、画面のアスペクト比(幅と高さの比率)によって
三つの時間軸を使い分けていたそうです。
こういった特殊な手法にもこだわりを感じます。
②ちょっとわかりにくい心理描写
アガサへの愛情
作家に「なぜホテルを残したのか」と問われたゼロは、
「アガサのため」と答えます。
しかし、私はこの答えに少し違和感がありました。
というのも、
ホテル=アガサとの思い出 よりも
ホテル=グスタフの意思の象徴 のように感じたから。
物語の大半は、グスタフとゼロの冒険譚のように描かれているので、
一度観ただけではアガサへの想いが、あまり印象に残らなかったのです。
ですが改めて観ると、ゼロがアガサを大切にしている描写はきちんと描かれていました。
例えば、メリーゴーランドのシーン。
カメラはアガサの顔をアップで映し、彼女の存在を強く印象づけています。
さらにグスタフがアガサに軽口を叩くたび、
「口説かないでください」と何度も釘を刺していて、
小さなやり取りから、ゼロの愛情が感じ取れます。
そしてゼロもアガサも、どちらも天涯孤独の身でした。
身寄りのない二人にとって、出会い、共に過ごした場所はこのホテルしかありません。
だからこそゼロは、ホテルを手放さなかったのだと思いました。
グスタフの過去
一方で、グスタフの過去はほとんど語られません。
ゼロが
「彼の故郷も知らないし、どんな家の出なのかも聞かなかった」
語るように、
明かされているのは、彼もかつてロビーボーイだったということだけです。
そのためファンの間では、
「退役軍人だったのではないか」
「ゼロと同じ移民だったのではないか」
など様々な考察がされています。
私が感じたのは、グスタフも戦争によって何かを失った人物なのではないかということです。
ゼロはこう語っています。
「彼の世界は、彼が現れるはるか前に消えていた。
彼は存在しない世界の幻を、見事に演じていた。」
つまりグスタフが守ろうとしていた「気品」や「礼儀」は、
すでに失われてしまった時代の価値観だったのかもしれません。
どんな状況でも気品を失わない姿は、
まさに文明を知る人の矜持のようにも見えました。
白黒のラストシーン
終盤、列車の検問のシーンだけが白黒で描かれます。
グスタフが亡くなる瞬間は直接描かれていませんが、
彼が暴力の犠牲になったことは示唆されています。
それまでの映画は、ピンクや紫を基調としたカラフルでポップな映像。
だからこそ、この白黒のシーンは強く印象に残ります。
まるでゼロの記憶の中だけが色を失っているかのようで、
華やかな物語の最後に残る、もの悲しい余韻を象徴する場面だったのではないでしょうか。
③コメディの裏にある時代の影
おとぎ話のような世界観で描かれる
『グランド・ブダペスト・ホテル』ですが、
その裏には不自由な時代の影も感じられます。
作中では軍の検問や国の占領など、
戦争を思わせる描写がたびたび登場します。
華やかなホテルの世界とは対照的に、社会は静かに変わっていきます。
架空の国家ズブロフカ共和国は、
中央ヨーロッパの歴史を思わせる設定とも言われていて、
この作品は、単なるコメディではなく
「失われた時代へのノスタルジー」を描いた物語としても見ることができます。


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